いまや健康情報は、検索エンジンやSNS、動画、口コミサイトなど無数に流れています。
便利な一方で、私たちの脳は自分に都合のよい情報だけを集めてしまう傾向があります。
これが確証バイアスです。

確証バイアスに気づかず情報を選ぶと、効かない方法に時間とお金を使ってしまったり、逆に有効な選択肢を見逃したりします。
この記事では、整骨院の現場で日々患者さんと向き合う立場から、専門用語をできるだけ避け、誰でも実践できる健康情報の見分け方をまとめました。

確証バイアスとは何かを、日常例でやさしく理解しよう

1. 確証バイアスの正体

確証バイアスとは、自分の考えや期待を裏付ける情報ばかりを集め、反対の情報を避けてしまう心のクセのことです。
たとえば、腰痛に効くという話題のストレッチを見つけたとき、うまくいった体験談ばかりを読み、効かなかった声や注意点は読み飛ばしてしまう。これが典型例です。

このクセは、次の三つの働きが重なって起こりやすくなります。生活の場面でイメージしてみましょう。

• 選択的注意
  
  自分にとって心地よい情報だけが目に入りやすくなる。広告のキャッチコピーやビフォーアフターの写真に意識が持っていかれ、注意書きや条件は見えにくくなります。

• 確認バイアス
  
  もともと持っていた考えを証明してくれる記事や動画ばかり探してしまう。検索ワードの選び方も、無意識に肯定的な言葉で固めてしまいがちです。
  
  例 腰痛 ストレッチ 効いた 口コミ と検索してしまい、効かなかった つらくなった 注意点 などを外す。

• 後付け解釈
  
  自分の考えに合わないデータを見ても、都合よく解釈してしまう。たとえば、症状が和らいだ理由が睡眠やストレス軽減だった可能性を、見落とすことがあります。

2. 体験談と科学的根拠の違いをつかむ

体験談はリアルで共感しやすいのが長所です。しかし、体験談はサンプルが一人で、条件がそろっていません。たまたま良くなった可能性、同時に別のことも始めていた可能性、時間経過で自然に改善した可能性など、多くの要素が混ざります。

一方、科学的な根拠は、できるだけ条件をそろえて比べる工夫が入ります。難解な統計を読む必要はありません。

次の三点が押さえられていれば、最低限の目安になります。

• 誰が、どのくらいの人数で、どのくらいの期間を観察したのか

• 比べる相手があるのか 何もしていない人や別の方法と比べたのか

• 結果だけでなく、やってみた人に負担やリスクはなかったのか

3. 健康情報で起きやすい落とし穴

• 宣伝と情報の境目があいまい
  
  記事内に広告が混ざっていることがあります。おすすめの理由が体験だけに偏っていないか、費用やリスクが書かれているかを見ましょう。

• 画像やグラフの印象に引っぱられる
  
  ビフォーアフター写真や数値だけで判断せず、撮影条件や単位などの説明があるかに注目します。

• 極端な言い切り表現
  
  これだけで治る これが唯一の方法 のような表現は、検討の余地が狭くなります。条件や個人差の説明がある情報の方が、実生活では役に立ちます。

誰でも今日からできる 情報の見分け方

ここからは、検索やSNSで健康情報を見るときに、そのまま使える手順を紹介します。肩こりや腰痛、産後ケア、交通事故後のむち打ちなど、テーマを問わず役立ちます。

1. 検索の第一歩 逆の立場でも検索する

最初は肯定的な言葉で調べても構いません。ただし、同じテーマを反対側の言葉でも検索します。

例 腰痛 ストレッチ 効かない 注意点

意見が割れている理由や、やってはいけない人の条件が見えてきます。

2. 複数の情報源を必ずそろえる

• 医療者や研究者などの専門家発信

• 現場の臨床家 整骨院や理学療法士などの実践的な視点

• 体験談や口コミ
  
  性質の違う三方向を最低限確認します。どれか一方向だけに偏ると、確証バイアスが強くなります。

3. 発信者の顔と責任範囲を見る

肩書や資格だけでなく、どの範囲まで責任を持って説明しているかに注目します。
費用やリスク、効果が出るまでの目安、通院の頻度、セルフケアの具体策など、実行のための情報がそろっているほど信頼度は上がります。

4. リスクとベネフィットの釣り合いを考える

やってみる前に、自分の体にとっての得と失を並べます。

例 ソフトな施術で痛みが少ない ベネフィット。翌日だるさが出る可能性 リスク。自分の生活リズムで続けられるか 費用や時間の負担。ここまで考えると、選択の納得度が高まります。

5. 家族や同僚に30秒で説明できるかテスト

自分が理解していれば、身近な人に短く説明できます。説明がうまくできないときは、まだ情報が不足している可能性があります。説明の途中で言葉に詰まるポイントが、あなたの疑問そのものです。

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